新潟発千夜一夜物語 指輪

第1話 指輪


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彰は昼食を食べに会社の入っているビルから外へ出た。その時、二五五歳と名乗る青年に出会った。彼は「私の指輪とお前の財布の中身を交換しよう。この指輪には不思議な力があって禿が直る。現にこの歳でも黒々しているだろう。」と言う。その歳とは裏腹に若々しいので怪しいとは思ったが、財布の中身がすでに昼食を食べる分くらいしか残っていないのを知っていたし、指輪にはそれ以上の値打ちがありそうでもあるし、食欲もあまり無かったので応じることしにした。
ところがその指輪をするようになってから、彰は青年の時のように活力が溢れ、若返っていくのを感じた。そして何より驚いたのは言われたとおり薄くなっていた頭髪までがかつて寝癖を直すのに手を余した時代のように豊富になっていった。そんなある日、会社の事務員の順子に「髪の毛が増えてきた。」と指摘された。彰はそれに答えて、「俺には呪われた運命がある。ある歳まで老けると、また若返っていかなければならないのさ。信じようと信じまいとそれは君の自由だが。」
順子は彰の気が狂ったと思ったのか気味悪そうに立ち去ろうとする。そこで彰は「今流行のかつらをかぶることにしたんだ。」と言った。
順子は「なんだそうだったの。驚いた。」と笑いこける。
その日、会社の帰りに、とうに死んでしまったような老人が道端に横たわっているのを見かけた。彼は私を見ると親しげに話しかけてきた。「その指輪を買って貰ったおかげでやっと冥土とやらにいける。ありがとう。」さらに続けて「その指輪ははめている限り若さを維持できる。ただしそれをはずせるのは誕生日の正午から一時間だけ。その間に他人の財布の中身全部と交換しなければ、その指輪は次の誕生日の正午まではずせない。」それだけ言い残すと老人は安らかな顔をして目を閉じた。

投稿日:2009.05.18
投稿者:一本足の案山子さん
掲載ブログ:徒然に…
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